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『終わりなき日常を生きろ』宮台真司

書籍紹介

 

今回は、宮台真司先生の著書である『終わりなき日常を生きろ』をご紹介します!

 

 

 

著者紹介 

宮台真司:1959年、宮城県仙台市生まれ。戦後の東大社会学博士号取得5人目であり、日本を代表する社会学者。戦後サブカルチャー研究の第一人者でもあり、音楽・映画・漫画を分析・批評し、それらの題材をもとに日本社会の分析を行う。

 

 

『終わりなき日常を生きろ』紹介

2018年,  著者: 宮台真司 ,筑摩書房

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この本の副題は、「オウム完全克服マニュアル」であり、当時日本中を震撼させた「地下鉄サリン事件」の実行組織、オウム真理教の教祖麻原彰晃等の逮捕を受けて急遽書籍として発刊されました。宮台真司はこの本の軸を "終わりなき日常" として置き、その凄惨な事件の背景を探ります。

 

キーワード① "終わりなき日常"

この本のキーワードである "終わりなき日常" とは一体何なのだろうか。そのまま捉えると「日常が終わらない?どういうこと?」となってしまうので、ここでもう1つ "終末感" という概念を補足しておきます。

"終末感" とは、「世界が終わってしまう」という感じ方のことです。こう聞くと「世界が終わる?ネガティブだなあ」と思う方もいるでしょう。

しかし宮台は(世界の終末後に共同体が復権する)男の子的終末感と、(世界は何も変わらない、今後が終わりだとする)女の子的終末感を区別します。つまり、世界が終わることを変革として捉える前者と、世界が終わることを停滞として捉える後者がいるということです。ここまでを "終わりなき日常" のヒントとします。

 

 

キーワード② "さまよえる良心"

この本のもう1つのキーワードである " さまよえる良心" について。最近のSNS上では「"良心"あふれる心優しい方々」が熱心に活動しています。自らの正義を全うするべく、共感を求め、不買運動をしたり、署名運動をしたり、社会をより良くするために働いています。"良心" は特別なエリートのみが持つものではなく、誰でも持つことができます。

しかし、一体この "良心" はどう定義付けられるのでしょうか。「良きこと」を決めるのは困難なことです。なぜなら文化・社会によって「良きこと」は異なるからです。例を挙げると、日本では「退職する年齢」を一律に定めることは「悪しきこと」ではありません。しかしアメリカでは「退職する年齢」を一律に定めることは「年齢による差別」として捉えられてしまいます。このように「良きこと・悪しきこと」は文化・社会によって異なるのです。

「良きこと」を1つに定める方法としては、宗教があります。神様が定めた「良きこと」はその宗教を信仰する人々にとって絶対的なことです。これを国家形態とする時、「神政国家」となります。「良きこと」を国家が定め、それに国民が従います。宮台はオウム真理教が一種の「神政国家」であることを指摘し、「さまよえる良心」に言及します。

 

 

 

2つのキーワード "終わりなき日常" "さまよえる良心" を軸に、サブカルチャーや性愛を題材として「地下鉄サリン事件」を分析する本ですが、この先も読み継がれるべき本だと思います。二度とあのような事件を起こさないために、あの事件を振り返るべきだと思います。

 

 

ここまでご閲覧ありがとうございます。『終わりなき日常』が気になった方はぜひ読んでみてください。